| 1 | やんちゃ坊主を叱るとき | 「太郎君、前へいらっしゃい。」 「太郎君、痛かったかい。」を繰り返す。 (向山洋一氏の実践) |
| (´90教室ツーウエイ4月号p9〜10から引用)
私は、ある時は「叱る」ことだけを一時間の授業のメインにしたこと があった。 やんちゃ坊主の太郎君を叱るのである。 しばしば脱線する太郎君を前に呼び出す。 太郎君、前へいらっしゃい。 静かな中にも、凛とした(と本人は思うような)言い方で呼ぶ。 間違っても、どなってはならない。 静かに、ほんの少しの真剣さで言う。 太郎君は、少々緊張して出てくる。 私は「授業中は静かにするのですよ」と言って、げんこつをにぎり、 はあと息をふきかける。 教室は一瞬シーンとなる。 私は、何度か息をふきかけたげんこつを、なぐるようにして太郎君の 頭に置く。むろん、なぐってはいない。 そして「さあ、席へもどりなさい」と太郎君に言う。 ここからがポイントである。 太郎君は、安心してニコやかに、あるいは元気に席の方に歩く。 私は、太郎君の歩く姿に、声をかける。 太郎君、痛かったかい。 太郎君は、「ううん」とか「痛くない」とか答える。 私は「きき目がなかったようだから、もう一回いらっしゃい」と言う。 教室は、爆笑につつまれる。 太郎君は、もどってくる。もう一度、同じことを繰り返す。 二度目のげんこつを終て、席にもどる太郎君に声をかける。 太郎君、痛かったかい。 太郎君は「ううん」とか「痛くない」とか答える。 私は、さらに言う。「今度もきき目がなかったようだから、もう一度 いらっしゃい」 ここでは、まちがいなく教室は爆笑の渦になる。 私は、三回、四回と同じことを繰り返す。 むろん、その時、その時で多少のアレンジは加える。 大切なのは「同じパターン」を繰り返すことだ。 何回目かになると太郎君が変化する。 太郎君、痛かったかい。 はい、とても痛かった。 「そんなに痛いはずはないでしょう。嘘ついちゃいけません。もう一度 出てらっしゃい」 またまた教室は爆笑である。 「同じパターン」を次々に、追いかけることだ。 太郎君の言い方が、また、変化をする。 太郎君、痛かったかい。 はい、少し痛かったです。 私は言う。「もう一度出てらっしゃい」 何回やっても、教室は爆笑である。 太郎君は、私のそばに来る。私は言う。 何だって。少し痛かったって。… ああ…それでいいんだ。席に帰りなさい。 ここで、また爆笑である。 席にもどる寸前に、また、声をかける。 太郎君。 これだけで、教室はまた湧く。 そして、私は言う。 授業中は、静かにね。 こんな時、一〜二年生の子は、そそっかしくも元気に「先生、今度は、 ぼくを叱って!」と前にとび出してくる。 太郎君は、どうなるだろう。 太郎君は大満足である。 クラスで一番のやんちゃ坊主が、出会いのその日に、大スターになっ てしまったのだ。 クラスのみんなも、びっくりする。 あの「やんちゃ坊主」が、クラスの中心になって、しかも静かになっ てしまったのだ。 |
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